人間失格
小野大輔
人間失格 歌詞
海王社文庫
海王社文庫
人間失格
失去做人的資格
太宰治
太宰治
朗読小野大輔
朗讀小野大輔
這兒是何方的小道?
こうこは、どうこの細道じゃ?
這兒是何方的小道?
こうこは、どうこの細道じゃ?
一個女孩哀婉的歌聲恍若幻聽一般隱隱約約地從遠處傳了過來。
哀れな童女の歌聲が、幻聴のように、かすかに遠くから聞えます。
不幸。在這個世上不乏不幸之人,不,盡是些不幸之人。即使這麼說也絕非過激之辭。
不幸。この世には、さまざまの不幸な人が、いや、不幸な人ばかり、と言っても過言ではないでしょうが、
但是,他們的不幸卻可以堂而皇之地向世間發出抗議,
しかし、その人たちの不幸は、所謂(いわゆる)世間に対して堂々と抗議が出來、
並且,“世間”也很容易理解和同情他們的抗議。
また「世間」もその人たちの抗議を容易に理解し同情します。
可是,我的不幸卻全部緣於自己的罪惡,所以不可能向任何人進行抗議。
しかし、自分の不幸は、すべて自分の罪悪からなので、誰にも抗議の仕様が無いし、
假如我斗膽結巴著說出某一句近於抗議的話,不僅是“比目魚”,甚至世間的所有人
また口ごもりながら一言でも抗議めいた事を言いかけると、ヒラメならずとも世間の人たち全部、
都無疑會因我口出狂言而驚訝無比的。
よくもまあそんな口がきけたものだと呆(あき)れかえるに違いないし、
到底我是像俗話所說的那樣“剛愎自用”呢?還是與此相反,顯得過去怯懦萎縮呢?
自分はいったい俗にいう「わがままもの」なのか、またはその反対に、気が弱すぎるのか、
這一點連我自己都弄不明白。 總之,我是罪孽的凝固體,
自分でもわけがわからないけれども、とにかく罪悪のかたまりらしいので、
所以,我只能變得越來越不幸,
どこまでも自から(おのずから)どんどん不幸になるばかりで、
而這是無法阻止和防範的。
防ぎ止める具體策など無いのです。
我站起來,琢磨著應該去弄點什麼藥調養一下,
自分は立って、取り敢えず何か適當な薬をと思い、
於是走進附近的一家藥房。就在我與藥房老闆娘照面
近くの薬屋にはいって、そこの奧さんと顔を見合せ、
一瞬間,她好像被鎂光燈的閃光照得發了怔,抬起頭圓睜著雙眼,
瞬間、奧さんは、フラッシュを浴びたみたいに首をあげ眼を見はり、
呆呆地佇立在那裡。那雙睜圓的眼睛裡既沒有驚愕也沒有厭惡
棒立ちになりました。しかし、その見はった眼には、驚愕の色も嫌悪の色も無く、
而是流露出像是求救又像是充滿了渴慕般的目光
ほとんど救いを求めるような、慕うような色があらわれているのでした。
唉,她一定也是個不幸的人,因為不幸的人
ああ、このひとも、きっと不幸な人なのだ、不幸な人は、
總是對別人的不幸感受特別敏銳。我正如此想著,猛然注意
ひとの不幸にも敏感なものなのだから、と思った時、ふと、
注意老闆娘原來是手撐拐杖、顫巍巍地勉強站立的,
その奧さんが松葉杖(まつばづえ)をついて危かしく立っているのに気がつきました。
我遏制住自己搶步朝她跑過去的念頭,只是和她對望著,此時我的淚水禁不住湧出眼眶,
駈け寄りたい思いを抑えて、なおもその奧さんと顔を見合せているうちに涙が出て來ました。
她那雙睜得大大的眼睛裡,也灑下了兩行淚。
すると、奧さんの大きい眼からも、涙がぽろぽろとあふれて出ました。
隨後,我一語不發走出藥房,
それっきり、一言も口をきかずに、自分はその薬屋から出て、
踉踉蹌蹌回到公寓,讓由子衝了杯鹽水給我喝下,然後默默地睡下。
よろめいてアパートに帰り、ヨシ子に塩水を作らせて飲み、黙って寢て、
第二天我謊稱有點感冒,在床上躺了一整天。
翌る日も、風邪気味だと噓をついて一日一ぱい寢て、
到了晚上,我對自己咳血的事情實在感到不安,於是爬起來,又去了那家藥房。
夜、自分の秘密の喀血がどうにも不安でたまらず、起きて、あの薬屋に行き、
這次我面帶微笑,一五一十將自己的身體狀況告訴了老闆娘,向她諮詢。
こんどは笑いながら、奧さんに、実に素直に今までのからだ具合いを告白し、相談しました。
“你必須戒酒。”
「お酒をおよしにならなければ」
我們就像是一家人似的坦率不客套。
自分たちは、肉身のようでした。
“我大概是得了酒精依存症了,就這會兒我還想喝酒哩。”
「アル中になっているかも知れないんです。いまでも飲みたい」
“不可以!我丈夫就是,明明得了結核病,卻偏說要用酒來殺菌,
「いけません。私の主人も、テーベのくせに、菌を酒で殺すんだなんて言って、
成天都泡在酒裡,結果自己縮短了自己的壽命。”
酒びたりになって、自分から壽命をちぢめました」
“我真的很擔心,我已經害怕得不行了。”
「不安でいけないんです。こわくて、とても、だめなんです」
“我這就拿藥給你。不過,唯獨這酒,你必須得戒掉。”
「お薬を差し上げます。お酒だけは、およしなさい」
老闆娘(她是個寡婦,膝下有一個男孩,考上了千葉還是什麼地方的醫科大學,
奧さん「未亡人で、男の子がひとり、それは千葉だかどこだかの醫大にはいって、
但沒過不久就患上和他父親同樣的病,現在休學待在醫院,
間もなく父と同じ病いにかかり、休學入院中で、
家裡還躺著個中風的公公,而她自己五歲上下時
家には中風の舅(しゅうと)が寢ていて、奧さん自身は五歳の折、
因為患小兒麻痺症,有一條腿完全無法站立)撐著丁字拐,在地上發出咚咚的響聲,。
小児(しょうに)痲痺(まひ)で片方の腳が全然だめなのでした」は、松葉杖をコトコトと突きながら、
翻箱倒櫃地為我找出各種藥品來
自分のためにあっちの棚、こっちの引出し、いろいろと薬品を取そろえてくれるのでした。
這是造血劑。
これは、造血剤。
這是維生素注射液,注射器在這裡。
これは、ヴィタミンの注射液。注射器は、これ。
這個是鈣片。這是澱粉酶,可以幫助消化,改善腸胃不適。
これは、カルシウムの錠剤。胃腸をこわさないように、ジアスターゼ。
這是……這個是……她充滿愛心地向我介紹了五六種藥物的功效。
これは、何。これは、何、と五、六種の薬品の説明を愛情こめてしてくれたのですが、
然而這位不幸的夫人,她的愛心對我來說過於沉重了。
しかし、この不幸な奧さんの愛情もまた、自分にとって深すぎました。
最後她對我說:“要是你忍不住、實在想喝酒的時候,
最後に奧さんが、これは、どうしても、なんとしてもお酒を飲みたくて、
就用這個藥。”說罷,迅速將一小盒藥用紙包了起來。
たまらなくなった時のお薬、と言って素早く紙に包んだ小箱。
原來是嗎啡注射液。
モルヒネの注射液でした。
老闆娘告訴我說,這藥的危害至少沒有酒來得厲害。我對此深信不疑
酒よりは、害にならぬと奧さんも言い、自分もそれを信じて、
加之當時我自己對酗酒產生了一種骯髒感,
また一つには、酒の酔いもさすがに不潔に感ぜられて來た矢先でもあったし、
倘若能夠擺脫酒精這個惡魔的長期糾纏自然不亦樂乎,
久し振りにアルコールというサタンからのがれる事の出來る喜びもあり、
於是毫不躊躇便將嗎啡注射進了自己的手臂。
何の躊躇(ちゅうちょ)も無く、自分は自分の腕に、そのモルヒネを注射しました。
不安、焦躁、羞臊等等,全都一掃而空,
不安も、焦燥(しょうそう)も、はにかみも、綺麗(きれい)に除去せられ、
我搖身一變成了性情開朗、喜歡高談闊論的男人。要注射一針,
自分は甚だ陽気な能弁家になるのでした。そうして、その注射をすると自分は、
頓時就會忘掉身體的衰弱,全身心地投入到工作中,一面作著漫畫,
からだの衰弱も忘れて、漫畫の仕事に精が出て、
一面思如泉湧,腦子裡不斷閃現出各種稀奇古怪的創意。
自分で畫きながら噴き出してしまうほど珍妙な趣向が生れるのでした。
先是一天注射一針,後來漸漸變為兩針,最後增加到一天四針,
一日一本のつもりが、二本になり、四本になった頃には、
而一旦缺少了它,我便無法工作了。
自分はもうそれが無ければ、仕事が出來ないようになっていました。
“這樣不行啊!要是上了癮,那就不得了啦!”
「いけませんよ、中毒になったら、そりゃもう、たいへんです」
聽藥房老闆娘這麼說,
薬屋の奧さんにそう言われると、
我登時覺得自己已經變成了重度癮君子
自分はもうかなり{可成り}の中毒患者になってしまったような気がして來て、
(我這個人生性脆弱,極易受到別人暗示。
(自分は、ひとの暗示に実にもろくひっかかるたちなのです。
例如有人說,就算我告訴你這筆錢花不得,那也無濟於事,因為這畢竟是你自己的事呀……
このお金は使っちゃいけないよ、と言っても、お前の事だものなあ、
聽到這話,似乎不花掉這筆錢反倒有錯,反倒會辜負對方的期待,
なんて言われると、何だか使わないと悪いような、期待にそむくような、
我會產生一種錯覺,於是必定要很快將它花掉)。基於對上癮的害怕不安,
へんな錯覚が起って、必ずすぐにそのお金を使ってしまうのでした)その中毒の不安のため、
我對藥物的需渴變得越發厲害。
かえって薬品をたくさん求めるようになったのでした。
“求求你,再給我一盒!月底我一定會付錢的。”
「たのむ! もう一箱。勘定は月末にきっと払いますから」
“錢嘛,什麼時候付倒都沒關係,只是警察管得很緊呢。”
「勘定なんて、いつでもかまいませんけど、警察のほうが、うるさいのでねえ」
哦,原來我四周始終圍裹著某種渾濁而灰暗的、見不得人的可疑氣氛。
ああ、いつでも自分の週囲には、何やら、濁って暗く、うさん臭い日蔭者の気配がつきまとうのです。
“那就請你無論如何幫我搪塞過去,求求你,夫人。讓我吻你一下!”
「そこを何とか、ごまかして、たのむよ、奧さん。キスしてあげよう」
老闆娘登時羞紅了臉。
奧さんは、顔を赤らめます。
我趕緊趁勢央求:
自分は、いよいよつけ込み、
“假如沒有這藥的話,我就完全沒法像模像樣地工作了。
「薬が無いと仕事がちっとも、はかどらないんだよ。
對我來說,那就像是強精提欲的激素一樣。”
僕には、あれは強精剤みたいなものなんだ」
“那還不如直接注射荷爾蒙好了。”
「それじゃ、いっそ、ホルモン注射がいいでしょう」
“你別拿我尋開心了。反正我要么借助酒,沒酒的話
「ばかにしちゃいけません。お酒か、そうでなければ、
就得靠那種藥,否則我真的沒法工作。”
あの薬か、どっちかで無ければ仕事が出來ないんだ」
“酒可不行。”
「お酒は、いけません」
“所以說嘛!自打我用了那種藥,
「そうでしょう? 僕はね、あの薬を使うようになってから、
就一直滴酒未沾啊。多虧了它,我現在身體狀況好得不得了哩。
お酒は一滴も飲まなかった。おかげで、からだの調子が、とてもいいんだ。
我可不想自己永遠只能畫那些下三流的漫畫,
僕だって、いつまでも、下手くそな漫畫などをかいているつもりは無い、
從今往後,我一定徹底把酒戒了,調養好身體,發奮鑽研,一定要成為一個偉大的畫家!
これから、酒をやめて、からだを直して、勉強して、きっと偉い絵畫きになって見せる。
眼下正是最關鍵的時刻,所以拜託你,當我求你啦。讓我吻你一下吧! ”
いまが大事なところなんだ。だからさ、ね、おねがい。キスしてあげようか」
老闆娘扑哧笑了起來:
奧さんは笑い出し、
“你真讓我為難。要是真上了癮,我可不管哦。”
「困るわねえ。中毒になっても知りませんよ」
她咚咚咚地撐著拐杖,從藥品架上取下那藥,說道:
コトコトと松葉杖の音をさせて、その薬品を棚から取り出し、
“不能給你一整盒,你會馬上用完的。給你一半吧。”
「一箱は、あげられませんよ。すぐ使ってしまうのだもの。半分ね」
“真小氣。算了,就一半吧。”
「ケチだなあ、まあ、仕方が無いや」
回到家裡,我立即註射了一針。
家へ帰って、すぐに一本、注射をします。
“不痛嗎?”
「痛くないんですか?」
由子戰戰兢兢地問我。
ヨシ子は、おどおど自分にたずねます。
“當然痛嘍。不過,為了提高工作效率,
「それあ痛いさ。でも、仕事の能率をあげるためには、
就算不情願也得這樣做啊。
いやでもこれをやらなければいけないんだ。
我這陣子精神不錯吧?好了,開始工作了!工作、工作!”我興奮地嚷著。
僕はこの頃、とても元気だろう? さあ、仕事だ。仕事、仕事」とはしゃぐのです。
有幾次,我還深更半夜跑去藥房叩門。
深夜、薬屋の戸をたたいた事もありました。
老闆娘身上裹著睡衣,咚咚咚地撐著拐杖出來開門。
寢巻姿で、コトコト松葉杖をついて出て來た奧さんに、
我猛地撲上去,抱住她,吻她,同時還裝出一副痛苦欲絕的涕泣狀。
いきなり抱きついてキスして、泣く真似をしました。
老闆娘不發一語,默默地遞給我一盒藥。
奧さんは、黙って自分に一箱、手渡しました。
藥品與燒酒一樣,不,甚至是比燒酒更可恨更骯髒的東西
薬品もまた、焼酎同様、いや、それ以上に、いまわしく不潔なものだと、
當我深切體會到這一點的時候,已經變成一個徹頭徹尾的癮君子了。
つくづく思い知った時には、既に自分は完全な中毒患者になっていました。
真是無恥之極。為了得到那藥,
真に、恥知らずの極(きわみ)でした。自分はその薬品を得たいばかりに、
我重又開始仿製春宮畫,並且
またも春畫のコピイをはじめ、そうして、
與那家藥房的殘疾老闆娘建立了一種真正稱得上醜惡的關係。
あの薬屋の不具の奧さんと文字どおりの醜関係をさえ結びました。
我想死。比任何時候都更想去死。我已經回不了頭了。無論我做什麼,
死にたい、いっそ、死にたい、もう取返しがつかないんだ、どんな事をしても、
無論我怎樣做,都是徒勞的,只會醜上加醜,避了坑反而落了井。
何をしても、駄目になるだけなんだ、恥の上塗りをするだけなんだ、
我已不配奢望騎自行車去瀑布遊玩之類的事情,唯有在污穢的罪惡上不斷堆疊卑劣的罪惡,
自転車で青葉の滝など、自分には望むべくも無いんだ、ただけがらわしい罪にあさましい罪が重なり、
讓苦惱越來越多,越來越強烈。我想死,我只有死路一條,
苦悩が増大し強烈になるだけなんだ、死にたい、死ななければならぬ、
苟活下去便是萬惡之根源。 ——儘管我彷佛鑽進了牛角尖,無論如何都擺脫不掉這種念頭,
生きているのが罪の種なのだ、などと思いつめても、やっぱり、
卻依舊身不由己地頻頻往返於公寓與藥房之間,活脫脫一副半狂半瘋的模樣。
アパートと薬屋の間を半狂亂の姿で往復しているばかりなのでした。
無論我怎樣拼命工作,由於藥物用量也隨之增大,
いくら仕事をしても、薬の使用量もしたがってふえているので、
積欠的藥費已經高得嚇人。老闆娘每次看到我就會眼中泛淚,我自己也禁不住潸然淚下。
薬代の借りがおそろしいほどの額にのぼり、奧さんは、自分の顔を見ると涙を浮べ、自分も涙を流しました。
地獄。我想到一個掙脫出地獄的最後手段。假使連這個方法也歸於失敗的話,
地獄。この地獄からのがれるための最後の手段、これが失敗したら、
我便只有勒頸上吊一條路了。我想賭一賭看這世上神明是否真的存在,於是抱定決心,
あとはもう首をくくるばかりだ、という神の存在を賭ける(かける)ほどの決意を以って(もって) 、
寫了封長信寄給老家的父親,
自分は、故郷の父あてに長い手紙を書いて、
坦承自己的所有實情(有關女人的事,終究還是無法落筆)。
自分の実情一さいを(女の事は、さすがに書けませんでしたが)告白する事にしました。
不想結果更慘,我引頸期盼,左等右等卻一直杳無音信。
しかし、結果は一そう悪く、待てど暮せど何の返事も無く、
焦灼與不安反而更使我加大了用藥劑量。
自分はその焦燥と不安のために、かえって薬の量をふやしてしまいました。
今夜,索性一口氣注射十針,然後跳進大河裡,一了百了——就在我暗下決意的那天下午,
今夜、十本、一気に注射し、そうして大川に飛び込もうと、ひそかに覚悟を極めたその日の午後、
“比目魚”就像憑藉惡魔的直覺嗅到了什麼似的,帶著堀木出現在我面前。
ヒラメが、悪魔の勘で(かぎつけた)嗅ぎつけたみたいに、堀木を連れてあらわれました。
“聽說你咳血了?”
「お前は、喀血したんだってな」
堀木盤腿坐在我面前,問我。
堀木は、自分の前にあぐらをかいてそう言い、
他臉上蕩漾起一種我從未見過的充滿柔情的微笑。
いままで見た事も無いくらいに優しく(ほほえみ)微笑みました。
那溫煦柔善的微笑使我既感激又興奮,我情不自禁地背過臉潸然淚下。
その優しい微笑が、ありがたくて、うれしくて、自分はつい顔をそむけて涙を流しました。
僅僅因為他那溫柔的微笑,我便被徹底擊敗,然後便被強行從這人世間沉埋。
そうして彼のその優しい微笑一つで、自分は完全に打ち破られ、葬り去られてしまったのです。
我被送上汽車。你必須先得住院治療
自分は自動車に乗せられました。とにかく入院しなければならぬ、
,後續的事情交給我們來辦就是了——“比目魚”用平靜的口吻規勸我
あとは自分たちにまかせなさい、とヒラメも、しんみりした口調で、
(那口吻平靜得我甚至想用“慈悲滿懷”來形容)。
(それは慈悲深いとでも形容したいほど、もの靜かな口調でした)自分にすすめ、
我儼然像一個毫無意志、毫無判斷力的人,
自分は意志も判斷も何も無い者の如く、
只知道嚶嚶啜泣,最終還是唯唯諾諾地聽從他們兩人的安排。
ただメソメソ泣きながら唯々諾々と二人の言いつけに従うのでした。
連同由子在內,我們四人坐在汽車上顛簸了許久,
ヨシ子もいれて四人、自分たちは、ずいぶん永いこと自動車にゆられ、
直到四周天色有些昏暗的時候,才抵達一座位於森林中的大醫院門口。
あたりが薄暗くなった頃、森の中の大きい病院の、玄関に到著しました。
我以為這是一所結核病療養院。
サナトリアムとばかり思っていました。
我接受了一名年輕醫生極為溫柔而周到的檢查,
自分は若い醫師のいやに物やわらかな、鄭重(ていちょう)な診察を受け、それから醫師は、
“好了,你就在這裡靜養一陣子吧。”
「まあ、しばらくここで靜養するんですね」
他略帶靦腆地微笑著對我說,比目魚”、堀木和由子
と、まるで、はにかむように微笑して言い、ヒラメと堀木とヨシ子は、
撇下我一個人回去了。
自分ひとりを置いて帰ることになりましたが、
走之前由子遞給我一個裝有換洗衣服的包袱,
ヨシ子は著換の衣類をいれてある風呂敷包を自分に手渡し、
又一聲不響從腰帶間取出注射器和沒有用完的藥塞給我。
それから黙って帯の間から注射器と使い殘りのあの薬品を差し出しました。
看來她還真的以為那是強精提欲的激素呢。
やはり、強精剤だとばかり思っていたのでしょうか。
“不,我已經不需要了。 ”
「いや、もう要らない」
這絕對是一件難得的事。拒絕別人的勸誘
実に、珍らしい事でした。すすめられて、それを拒否したのは、
說是我生平以來唯一的一次,也一點不為過。
自分のそれまでの生涯に於いて、その時ただ一度、といっても過言でないくらいなのです。
我的不幸,是因為沒有拒絕的能力,因此一旦別人勸誘,我便覺得假如拒絕的話,
自分の不幸は、拒否の能力の無い者の不幸でした。すすめられて拒否すると、
會在對方的心里和自己的心裡都留下一道顯而易見、永遠也無法修補的裂痕。我已習慣畏服於這種恐懼。
相手の心にも自分の心にも、永遠に修繕し得ない白々しいひび割れが出來るような恐怖におびやかされているのでした。
但當時,曾經令我瘋狂渴求的嗎啡,
けれども、自分はその時、あれほど半狂亂になって求めていたモルヒネを、
我卻極其自然地拒絕了,或許是被由子那種“如神明般的無知”打動了吧。
実に自然に拒否しました。ヨシ子の謂わば「神の如き無智」に撃たれたのでしょうか。
那一瞬間,我應該已經擺脫掉毒癮的糾纏了吧?
自分は、あの瞬間、すでに中毒でなくなっていたのではないでしょうか。
很快,我被那名掛著靦腆微笑的年輕醫生領著,
けれども、自分はそれからすぐに、あのはにかむような微笑をする若い醫師に案內せられ、
進入一棟病房,隨即大門被哐啷一聲上了鎖。這裡是瘋人院。
ある病棟にいれられて、ガチャンと鍵(かぎ)をおろされました。脳病院でした。
“到沒有女人的地方去”,我在服用巴比妥後說出來的愚癡的囈語竟然奇妙地變成了現實
女のいないところへ行くという、あのジアールを飲んだ時の自分の愚かなうわごとが、
這棟病房裡全都是男性精神病患者,
まことに奇妙に実現せられたわけでした。その病棟には、男の狂人ばかりで、
連看護也是男的,沒有一個女人。
看護人も男でしたし、女はひとりもいませんでした。
如今我非但是一個罪人,還成了一個瘋子。
いまはもう自分は、罪人どころではなく、狂人でした。
不,我絕對沒有發瘋!
いいえ、斷じて自分は狂ってなどいなかったのです。
即使是瞬間片刻,我也不曾瘋過。但是,聽說所有瘋子都會這樣說自己的。
一瞬間といえども、狂った事は無いんです。けれども、ああ、狂人は、たいてい自分の事をそう言うものだそうです。
換句話說,凡是被關進這所醫院的人全是瘋子,而沒被關進來的則是正常人。
つまり、この病院にいれられた者は気違い、いれられなかった者は、ノーマルという事になるようです。
我問神明:難道不抵抗也是罪過嗎?
神に問う。無抵抗は罪なりや?
面對堀木那不可思議的美麗微笑,我感激涕零,失去了判斷,毫無反抗,坐上汽車
堀木のあの不思議な美しい微笑に自分は泣き、判斷も抵抗も忘れて自動車に乗り、
被帶進這裡,從而變成了一個瘋子。即使從這裡出去,
そうしてここに連れて來られて、狂人という事になりました。いまに、ここから出ても、
我還是會被人在額頭烙上“瘋子”的印記,不,是“廢人”的印記。
自分はやっぱり狂人、いや、癈人(はいじん)という刻印を額に打たれる事でしょう。
我已喪失做人的資格。
人間、失格。
我已經徹底變成一個非人了。
もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。